Morisawa Type Design Competition 2016

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レポート:第5回特別セミナー「グローバル・タイプデザイン」後半 中国語簡体字・韓国語(ハングル)・欧文

2017年8月3日

株式会社モリサワは、2017年5月11日(木)、第5回特別セミナー「グローバル・タイプデザイン」をUDXシアター(東京・秋葉原)にて開催しました。
このセミナーは「タイプデザインコンペティション 2016」表彰式と同日・同会場で行なわれたもので、「グローバル・タイプデザイン」という共通テーマのもとに、日本、台湾、中国、韓国、アメリカの代表的な書体メーカが集結。日本語、中国語簡体字、中国語繁体字、韓国語、欧文という5つの文字・言語について、最新のフォント事情や技術的な取り組みをおよそ2時間に渡って紹介しました。

前半(日本語・中国語繁体字)のレポートはこちら

3つめのセッションは「中国語簡体字」。プレゼンターを務めたのは、中国・北京漢儀科印信息技術有限公司副総経理闻申生氏です(以降、漢儀と省略)。

セッションはまず、新しくなった漢儀のロゴを紹介することから始まりました。「字」の文字を崩したその造形に対し、闻氏は「この『字』という文字のエレメントは書道的に感じますが、画線からは機械的な印象を受けます。フォント制作における、手書きとテクノロジーという二つの要素を示すロゴとなっています」と解説。続いて、中国語簡体字の文字セットや中国語フォントの歴史について触れると、話題は漢儀のフォント制作プロセスへ移りました。「フォント制作に使っているツールは、私たち漢儀が独自に開発したもので、従来のフォント制作ツールの機能もカバーし、なおかつ漢字のロジックを取り入れたものです」と話し、フォント制作における4つのプロセスを紹介。

まず手書きのデザインをスキャンしてデジタル化し、ストロークや偏、旁といったパーツを標準化。そのパーツを使い、必要な文字を作り上げていき、最後に印刷をするなどをして検証を行ない、デザインの微調整をするというもので、このワークフローについて闻氏は「このような手法をとることで、文字種の拡張のスピードが上がり、デザインも規格化しやすくなりました」と語りました。一方で「2万文字という漢字をカバーするには10人が1年ずつかけて制作する必要があり、いいツールがあっても依然、手間のかかる作業なのです」とその苦労をにじませました。

こうした膨大な漢字制作をいかに効率化するか。その取り組みとして紹介されたのは、文字の骨格、仮想ボディの比率(正方形/縦長/横長)、フトコロの広さ、ストロークの形状をモデル化する手法です。実際にこの方法で作られた「旗黒」という書体を紹介すると、「旗黒」が使われている自動車の広告をスクリーンに映し出しました。この広告クライアントとのプロジェクトでは5つの書体を1ヶ月で作る必要がありましたが、闻氏はわずか1週間でこのファミリーを作り上げたとエピソードを披露。フォント制作効率化の成果を語り、セッションを終えました。

4つめのセッションは「韓国語ハングル」。プレゼンターを務めたのは、韓国・SANDOLL Communications Inc.CEOのSeok Geum Ho氏です(以降SANDOLLと省略)。

セッションは、ハングルの使用地域や使用者数、文字の構造解説から始まり、「ハングルは子音と母音の組み合わせで文字が構成されています。それぞれの文字のパーツをどのように作っていくかが重要です」とデザインのポイントを語りました。

そして、よく使われているSANDOLLの書体として「サンドル明朝 (Sandoll Myeongjo) Neo1」と「サンドルゴシック (Sandoll Gothic) Neo1/2/3」という二つのファミリーを見せ、「このフォントはiPhoneやiPadなどのApple製品をはじめとして全世界で使われています」と言葉を加えました。次に、多言語展開の例として、アドビシステムズ、Googleとともに開発をしている汎CJKフォント「Source Han Sans」(源ノ角ゴシック)と、2017年4月にリリースされたばかりの「Source Han Serif」(源ノ明朝)を紹介。SANDOLLのフォントが現在、多くの環境で使われていることを示しました。

続いて、Seok氏が取り上げたのは、SANDOLLが手がけるクラウドフォントサービス。これはクラウド上のフォントをパソコンやモバイル端末から利用できるほか、APIとしても提供することによって、さまざまな環境でSANDOLLのフォントを利用可能にするものです。このサービスは、SANDOLLにとって、フォントを購入して使うという形から月極め、年極めというサブスクリプション方式へのシフトという、ビジネスモデルの転換という役割も果たしています。

Seok氏は「2014年のサービス開始以降、37ヶ月で18万アカウントにサービスを提供しており、韓国のトップバッターになっています」と新しいフォントビジネスに対する手応えを示し、セッションを終えました。

5つめ、最後のセッションは「欧文」。プレゼンターを務めたのは、アメリカ・TypeNetwork Director(取締役)のRoger Black氏です。

フォントビューロ社の創設者のひとりであるBlack氏は、まず、TypeNetworkがフォントビューロからスタートした設立1年の若い会社であること、そして全世界で数多くのフォントメーカーとパートナー関係にあることを説明。スクリーンにフォントのサンプルを移しながら、この1年間で50の新しいタイプファミリーをリリースしたと話しました。

そして、「全人口の70%、131の言語をカバーできる」と欧文ならではの強みを語ると、日本語や中国語にくらべてデザインすべき文字数が少ないことを多くのフォントをリリースできた理由のひとつにあげました。

また、生産性を押し上げたこのほかの要因として、パートナーとのコラボレーション、そして「RoboFont(ロゴフォント)」の存在が大きかったと紹介。「RoboFontはタイプデザイナーのための新しいオープンなプラットフォームです。世界中のフォントを開発できる能力を備え、それに必要不可欠な高度なツールを提供しています」とブラック氏は続けました。

今後、欧文フォントが向かう方向について話題が移ると、John Hudson氏の「A single font that behaves like multiple fonts.」という言葉を引用し、「この言葉にうまく表わされていますが、シングルフォントがマルチフォントのようにふるまう。シングルフォントで複数のフォントのように使えるものを目指しています」と指針を語りました。

その例として、線の太さや幅、大きさだけでなく、画線やセリフの形状を変化させるバリアブルフォントを取り上げ、こうしたひとつのフォントから多様なバリエーションが生み出せるようになると、表現力が豊かになる、フォントサイズが小さくウェブの高速化につながる、フォントの取り扱いが容易になるなどのさまざまなメリットをあげました。

Black氏はこうした話に合わせて、限られたスペースに文字を入力していくと幅に合わせて文字が縦長に変形していくレスポンシブなバリアブルフォントのデモや、フォントの線と先端の形状を選択するとデザインが変わるバリアブルフォントのデモをスクリーンに映し出し、フォントテクノロジーが進む方向性を提示。これは未来の話ではなく今の話なのだと伝え、セッションを終えました。