欧文部門 モリサワ賞 佳作

Path Grotesk

Designer

廖恬敏Tien-Min Liao

台湾

ニューヨークを拠点とする独立系タイプデザイナー。クーパー・ユニオン卒業。自身のリテールフォントを発表する一方で、エージェンシーやタイプファウンダリーと協働しながら活動中。カスタムの書体デザイン、ロゴタイプの開発、ワードマークのローカリゼーションといった豊富な経験を持つ。

  • 制作意図

    Path Groteskは、フレンドリーで親しみやすい印象のあるコンデンス書体です。手書きの文字からインスピレーションを得た字形は、硬い印象を持たせない滑らかで流れるようなカーブが特徴です。繊細なストロークの接続部やターミナル部には動きの方向に沿った切り口があり、ペン先の平たいマーカーで描かれたような自然な手書き感を与えています。イタリック体でも手書きの雰囲気は表れており、スピード感と力強さを感じます。Path Groteskはテキストに温かみと個性を持たせながら潔くコンデンスされたデザインを保っています。

  • 入賞コメント

    欧文部門で私の作品がこのように評価され、大変嬉しく思います。審査員の皆様に心から感謝申し上げます。今後もタイプデザインの可能性をさらに探求していきたいと思います。

審査員コメント

  • ラウラ・ミセゲル

    このシンプルなディスプレイ書体のファミリーは、正体とスラントの両方があり、字形を通してトーン、強弱、意図を表現できている点から選ばれました。要所要所で見受けられる曲線的なトップのエレメントが、アーチと縦画の交差部に見られる断続的ではっきりした強弱と調和しています。そのコンデンストなプロポーションは、エレガントさや重厚感を感じさせつつ、魅力的なニュアンスも醸し出しています。

  • イリヤ・ルーデラマン

    構造のシンプルさにこの書体の美しさがあります。手と筆の繊細な動きが、限られたスペースの中で優雅な形を生み出し、ナローなプロポーションを持つ書体となっています。それぞれの曲線や線には精密さと意図が込められ、機能性と視覚的な魅力を見事なバランスで表現できていますね。明快さと洗練さの本質を捉えたデザインであり、すべてのディテールに目的が感じられます。この丁寧なアプローチは視認性を高めるだけでなく、書体に個性を与え、時代を超えて幅広い用途に活用できる汎用性を備えています。控えめながらも計算されたエレガントさこそ、この書体の最大の魅力です。

  • インドラ・クッファーシュミット

    この非常にコンプレストされたディスプレイ用のサンセリフ書体は、ストロークが交差する部分に際立った切り込みがあることが特徴です。ブラックレター体に似た構造を持ちながら、普段ブラックレター体に見られる歴史的なニュアンスを排除したような印象を持ちます。すべて大文字で表記した場合、少し窮屈に見える書体ですが、小文字や数字、ときに急傾斜でスピード感のあるイタリックでは遊び心のある特徴が際立ちます。きわめて大型の看板などに使われると映える書体だと思います。

掲載している作品、プロフィール、制作意図、入賞コメントは、作者から提出された内容をもとに掲載しています。