和文部門 モリサワ賞 金賞

くろむぎ

Designer

遠矢良彦

日本

1992年鹿児島県生まれ。2018年筑波大学システム情報工学研究科博士前期課程修了。文字全般に興味を抱き、大学在学中の2年間、文字塾(東京)で明朝体を学ぶ。プログラマー。

  • 制作意図

    端正な骨格の楷書をモチーフに、極度に抽象化した輪郭で構成したディスプレイ書体です。長短のメリハリと鋭角の起終筆によって、太字でも空間を埋め尽くしすぎず、インパクトはあるけど重苦しくない、風通しの良い文字を目指しました。三角形の点画がソバの実のようなので、ソバの古名から「くろむぎ」と名付けました。

  • 入賞コメント

    非デザイナーながら、自分なりの文字愛を証明すべく、挑戦のつもりで応募を重ねてきました。入賞するとは夢にも思わず、驚きとともに大変光栄に思っています。形になっていないアイデアはまだたくさんあるので、飽きずに挑戦を続けていきます。

審査員コメント

  • 鳥海修

    民芸・版画を思わせる紙を切ったような単純な線で構成されているにもかかわらず、文字の佇まいに手書き感が漂っています。漢字の空間もきれいに制御されていて仮名もうまい。たとえば「な」のむすびの部分は紙を切るようなアプローチではこれほどきれいな線にはならないはずですが、シンプルで割り切った画線処理の中で上手に仕上げています。完成度、ほのぼのとした雰囲気、いずれの点でも金賞にふさわしい書体だと思います。

  • 西塚涼子

    文字の骨格、処理のしかたが秀逸で、シンプルな組み方で大きく使っても小さく使っても魅力的に見える点を評価しました。漢字と仮名のバランスもよく、全体を通して品質の高さと安定感を感じます。カッターで切った文字と筆で書いた文字、その合いの子のような文字をつくるには、筆とタイプデザインの知識が必要になりますが、そのバランスがうまくとれたデザインですね。幅広い用途で使える使い勝手のいい書体だと思います。

  • 北川一成

    ⽂字は⾝体性を使うことで情緒が⽣まれます。カーブを描くときの⼒の⼊れかた、筆圧の違いによって現れる形が情報となり、⽂字の⿊と同時に⼼地よい余⽩(⽩)を⽣み出すんですね。⽂字もデザインも⿊ばかり⾒ていてはいけない。その点でこの作品は⿊と⽩の間(ま)を完全に制御できており、⽂字そのものだけでなく、余⽩も美しい。普段からちゃんと⽂字を書いている⼈が、第三者を想定して作っているという印象を受けました。

掲載している作品、プロフィール、制作意図、入賞コメントは、作者から提出された内容をもとに掲載しています。