和文部門 モリサワ賞 佳作

暖簾体

Designer

林こうき

日本

1992年埼玉県出身。桑沢デザイン研究所(ビジュアルデザイン科)修了後、東京都内のデザイン会社で活動中の傍ら、GLAMGRAPH DESIGNの屋号で活動範囲を広げている。

  • 制作意図

    横組みを得意とした長体のディスプレイ用楷書体です。日本のお祭りでよく見る屋台の「暖簾」から着想を得て、限られた面積の中でできるだけ大きく表示できるよう大胆にボディを細長くしました。縦線と横線のコントラストを少なくして、インパクトのある力強い表情をもつ書体を目指しています。

  • 入賞コメント

    手書きの人情味がある文字が好きで、お祭りの屋台で見る「暖簾」を写真に収めていました。その研究成果のひとつとしてこの書体を制作したのが、このように評価されて嬉しく思います。これからも自分が魅力的だと思うものに正直になり、研究と実験を続けてタイポグラフィの魅力を追いかけていけたら幸せです。

審査員コメント

  • 鳥海修

    上手い、が第一印象です。組見本の「アメリカンドッグ」などを見ていると参道に並ぶ祭りの屋台を思い浮かべウキウキします。庶民的で懐かしい雰囲気をもち、柔らかく素直な表情のデザインには好感を持ちます。それにしても極太に近い筆文字をほぼ半角に近いスペースにデザインする力量はすごいですね。

  • 西塚涼子

    長体の楷書体面白いですね。横書きで字間行間とも詰め気味に組んだとき、今まで見たことがない書体なのに昔から見ていたかのような雰囲気が現れます。書道的というよりは天地を揃えてフェルトペンで書いたようなレタリングですね。個々の字を見ると一生懸命書いたような、でも決してひとつひとつが達筆ではない辿々しいフォルムが味わいを出しています。できそうでなかなかできないデザインです。

  • 北川一成

    神社や歴史的建造物の由緒の説明に合いそうな、重厚感のある書体です。下町の惣菜屋さんのメニューにもぴったりです。「さ」と「き」では丸くふくらんだ部分の造形が異なっているなど、画一的でない設計で、手書きのニュアンスが醸し出されています。筆運びにおいてぐっと溜めるところと抜くところの緩急の付け方や、促音や拗音のサイズ感もお見事で、作者は相当腕の立つ方だとお見受けしました。

掲載している作品、プロフィール、制作意図、入賞コメントは、作者から提出された内容をもとに掲載しています。