和文部門 モリサワ賞 佳作
すずたけ
Designer
小林大真
日本
2002年神奈川県出身の22歳。2015年東京大学「異才発掘プロジェクトROCKET」第二期生選抜。文字デザインの道を志し映画題字、ロゴタイプ等を手掛けるが、レタリング通信講座中退。2022年専門学校桑沢デザイン研究所入学、豊島晶氏らに学ぶ。現在、同昼間部ビジュアルデザイン専攻3年生。
審査員コメント
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鳥海修
フリースタイルの極太ゴシック体とでも言うべきでしょうか。この作品を見たとき、くいこみ処理を取り入れたほかの書体を連想しましたが、よく観察すると点画の重なりではなく、白い線で点画を区切る方法で、平面的なデザインになっています。「自」という文字をじっと見ているとなんの文字だか分からなくなる面白みが感じられる作品です。
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西塚涼子
今回、このような極太のディスプレイ書体が多かったように思います。この書体はその中でもとても秀逸で目に留まりました。そもそも極太書体というのは見た目以上に大変難しく苦労されたと思います。この書体の面白いところは、太さの制約がある中でも手書き風のポップなレタリングスタイルになっているところです。例えば「日」や「国」、「書」などの口の部分が2画でできています。このような大胆な処理が書体の面白さにつながったのでしょう。
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北川一成
一見するとキャラが濃い書体ですが、組むことで「きちんと読める」ところに驚きを覚えました。まるで一反木綿のような「ノ」など、単体で見ると読めそうにない文字も、組んでみると難なく読めるところが素晴らしいです。黒い部分を見ると太い線の組み合わせに見えますが、余白に注目すると、非常に繊細なバランスで設計されていることに気が付きます。絵本の擬音語の表現などに効果的に使える書体だと思います。
掲載している作品、プロフィール、制作意図、入賞コメントは、作者から提出された内容をもとに掲載しています。
制作意図
小さい頃から大正期の児童文学・詩が好きでした。本書体を作るにあたって想像したのは、その情感です。遊び心をもって、パーツを譲り合わせるように文字を造形し、線、重心、リズムを作り出しています。
短文や散文を組むことを想定したディスプレイタイプですが、組み方によって様々に浮かび上がるラインやシルエットを楽しんで頂けることを願っております。
入賞コメント
愛してやまぬ書体設計の世界で、憧れてきたこの栄えある場。社会への門出を前にして、初めて送り出した唯一の書体がこのように賞をいただけたことは、未だ夢のようです。
文字はことばをうつす鏡。ことばの光も陰も写せなければなりません。活字壇の旗じるしとして、この場が、これからも清濁併呑せらる発明の場であり続けてほしいと思います。