和文部門 モリサワ賞 佳作
四S
Designer
中澤拓也
日本
1970年生まれ。過去約20年グラフィックデザイナーとして従事していたが、現在はデザイン関係の職から離れ、趣味として独学で書体制作を行う。
審査員コメント
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鳥海修
堅苦しくなくカジュアルな雰囲気を纏ったゴシック体ですね。肩ひじを張らない素直な表情がよいと思います。惜しむらくは完成度がそれほど高くないことでしょうか。たとえば「聞」の中の「耳」が細かったり「麗」の「鹿」の部分が太かったり、さらに仮名も太さのバラツキが目立ちます。それらの点を改善するとさらによくなるように感じました。
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西塚涼子
字面率(枠に対しての字の大きさ)が低くふところも締まったゴシックですが、弱くなることもなく風通しの良い書体に仕上がっています。仮名の良さに加えて、漢字のバランスが通常のゴシック体よりも楷書体に近いからかもしれません。例えば「対」を見ると左側がだいぶ高い位置にいます。このように偏と旁のバランスで表情は大きく変わるものです。この書体はその絶妙なバランスが成功しています。
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北川一成
すっきりとまとまったゴシック体でありつつ、まろやかにカーブがかかっているところ、ストンと直線的なところと、緩急の付け方のバランスが絶妙です。線のニュアンスの使い分けが巧く、ほっこりした温かさと品の良さを両立しています。少しコンパクトに作られた数字や、逆にしっかりとした存在感を持たせた約物により、文字を組んだときも、ツボを押さえた非常に良いバランスになっていると思います。
掲載している作品、プロフィール、制作意図、入賞コメントは、作者から提出された内容をもとに掲載しています。
制作意図
個人的に既存の和文サンセリフはふところの広いカジュアルな雰囲気の書体が多く、エレガントなものが無い印象です。そこで、ふところの締まったエレガントな和文サンセリフを試作しました。楷書を参考に四角いホディ枠の天地左右に文字を押し込めず、手書きのような自然な骨格のヒューマニストサンセリフを目指しました。
入賞コメント
制作に十分な時間をかけることができず、自分では完成度にあまり納得できなくて提出するのを躊躇していたので、佳作に選ばれたことに喜びと同時に非常に驚いております。高名な方々に批評をいただけるのは怖くもあり楽しみでもあります。