ハングル部門 モリサワ賞 銀賞
sanmun
Designer
アン・サムヨル(安三烈)
韓国
1971年ソウル生まれ。弘益大学視覚デザイン科を卒業し、1996–2001年にAhn Graphicsでグラフィックデザイナーとして勤務、現在フリーランスのデザイナーとして活動中。「安三烈(アン・サムヨル)体」で東京TDC2013タイプデザイン賞受賞。
審査員コメント
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沈愚珍Sim Wujin
小さな変化にも気づきやすい本文用セリフ書体でさまざまなチャレンジを重ねた作品です。挑戦しただけに不安定な部分も出てくるもので、勇気と執念も必要だったはずです。しかも、きちんと作ることが非常に難しい縦書き・横書き兼用にまで挑戦しています。もちろん文字を四角い枠いっぱいにすれば、縦・横ともに安定させることができますが、形に無理が出てきてしまいます。型に合わせようとすると文字の形が疎かに、文字に合わせようとすると文字列が不安定になるという迷路を突破したデザインといえるでしょう。見れば見るほど悩みと努力を感じ、賞賛の拍手を送るほかありません。さらに整え、多くの人に愛される書体になることを期待しています。
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崔瑟杞Choi Sulki
この作品では実験性を高く評価しました。銀賞については完成度の高い書体よりも新しい試みに授与しようという方針を考えていましたが、(予想に反して)残念ながら今回の銀賞作品は、新しい試みであるだけでなく、完成度も高かったと思います。この実験の核心は、縦書きと横書きの両方を満足させようとした点にあります。二つの組版が生み出す文章の質感が異なっており、同じ文字が横書きと縦書きでどのように異なる作用をするのかを探る楽しさがありますね。
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閔ボンMin Bon
今回の審査では、自分なりの読みやすさを表現するような、オリジナリティを感じさせる作品が多いと感じましたが、この書体はその中でも縦組みと横組みの両方に対応できる点がもっとも評価につながりました。横組みではカジュアルでラフな印象になる一方、縦組みではやわらかい印象になるという、異なるニュアンスを持っている。その独創的なテクスチャにも高い実験性を感じますし、本文書体として活用できる点もユニークですね。
作品のサンプル文章で参照された引用元:特別展 「韓国の靴、足と履物(2024)」 のプレスリリースおよび博物館新聞(第634号)の原稿
制作意図
随筆を読んでいたとき、本文に使われている書体が日常の些細なことを表現するには冷たく見えるという印象を受けました。そのため、この作品では、正直でありながら親しみやすい姿の書体をイメージしています。随筆、日記など散文にふさわしいすっきりとした優しい書体を考えてデザインしました。
細明朝体と新明朝体の間の空間、こぢんまりとした大きさの子音比率で、硬筆の感じがする本文用の書体です。
入賞コメント
ほとんどの書籍に本文として使われるハングルは、チェ·ジョンホ体に根幹を置いた堅実でしっかりとした書体です。しかし詩、小説、随筆など文学ジャンルごとにすべて合うものではないと思います。多様な文学的感受性を表現するのに適した書体が多くなることを願います。