簡体字部門 モリサワ賞 金賞
WENKAI
Designer
孙丁词Dingci Sun
中国
中国福建省松渓県生まれ。中央美術学院で学び、現在は漢儀在職中。
審査員コメント
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朱志偉Zhu Zhiwei
満場一致で金賞に選んだ非常にユニークな作品です。楷書は一般的にきっちりした骨格で書かれることが多いのですが、この作品は非常にリラックスして書かれています。文字のサイズや画線の太さにも統一感があり、組み上げられた版面は非常に均一で美しい。篆書のような丸みを帯びた運筆には余計な転折やトメがなく、弾力のある線質が特徴的です。軽い線のように見えて実はしっかり作り込まれた、禅の趣を感じさせる作品だと思います。
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陳嶸Chen Rong
金賞になったこの作品は多くの人が使いたいと思える書体ではないでしょうか。本人は八大山人の書風を取り入れたと説明しているようですが、私個人的にはむしろ弘一法師の雰囲気を感じました。いずれにせよ、おおらかな手書き感は強いですし、なにより重要なのは今風のリラックス感が非常にうまく表現されていることです。特に縦で組むととてもきれいで、古風な文人気質とヒューマニストな雰囲気が融合した書体だと思います。
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劉暁翔Liu Xiaoxiang
審査の最初の段階から際立っていた作品です。制作コンセプトを見ると、八大山人の書風を取り入れたとされていますが、このような書道風の文字をフォントとして制作する場合、一番難しいのは前の文字の終筆と次の文字の起筆のつながり、つまり文字と文字の間の関係性が失われやすい点です。しかし、この作品では文字と文字の間の流れがきちんと見え、小さいサイズに組んでもとても心地いいですね。版面の黒みも均一に整えられています。
掲載している作品、プロフィール、制作意図、入賞コメントは、作者から提出された内容をもとに掲載しています。
制作意図
世間で楷書といえば「顔・欧・柳・趙」の四大書風や、抑揚があって厳格なイメージが一般的です。しかし、良い楷書体は必ずしもそのような姿である必要があるのでしょうか。八大山人・朱耷は、各流派を研究した上で、中鋒を活かして筆を運び、丸みのあるシンプルな書風を生み出しました。本作品は、朱耷の筆法の特徴を取り入れ、既存の規則にとらわれることなく、より自然で「一味違う」文人風の楷書を目指しています。
入賞コメント
WENKAI(文楷)を作ったのは、人生で最も孤独だった夏で、当時の唯一の友は文字でした。もともと勤勉な性格ではなく、仕事の後に自主制作をすることは、途中で投げ出したくなることも多々ありました。それでも最後まで粘り強く取り組み、完成させることができた自分に感謝したいです。この賞をいただいたことは大きな励みとなり、心を込めて文字を作り、真摯に創作することが、必ず価値あるものを生み出すのだという自信につながりました。