簡体字部門 モリサワ賞 佳作

Yourong Type

Designer

张丛馀・陈月Congyu Zhang & Yue Chen

中国

张丛馀:タイプデザイナー。Shake Up Laboratoryタイプデザインディレクター。ニューヨークTDC69、TDC70のタイプデザイン賞を受賞。
陈月:多言語タイプデザイナー。レディング大学で書体デザイン修士号を取得し、博士課程在籍中。訳著に『文字設計的可能』など。ニューヨークTDC70タイプデザイン賞を受賞。

  • 制作意図

    Yourong Type (有容体) は見出し用のデザイン書体です。漢字にはさまざまな構造がありますが、「海は無数の川を受け入れる」という古訓のように、四角い字面枠という器の中に、漢字を水のように流し込み、その形を変えながら独自のフォルムを生み出します。この手法では、伝統的な漢字の骨格にとらわれることなく、視認性を確保しつつ、筆画や構造を自由にアレンジすることで、創造性の美しさを追求しています。

  • 入賞コメント

    「佳作」として評価していただけたことは、これまで書体デザインの分野で重ねてきた努力とたゆまぬ探求が認められたこと、そして今後の作品制作への大きな期待を寄せていただけたことの表れだと感じています。書体デザインの道を歩む上では、伝統を尊重しつつ、革新する勇気を持つことが不可欠です。今後もさらなる可能性を追求し、フォント業界をより一層盛り上げていきたいと思います。

審査員コメント

  • 朱志偉Zhu Zhiwei

    豊かで重厚感があり、穏やかで美しい印象です。極太のスタイルでも白黒のコントラストがはっきりしており、文字ひとつひとつがくっきりと見やすく設計されています。デザイン書体でありながら、清代の書家・劉墉の書風にも通じる雰囲気を持っています。「一見すると丸みがあり、綿のようにふわふわとした印象ですが、よく見ると骨格がしっかりしており、芯の強さを感じます。」劉墉の作品に対するこの評価は、本書体にも当てはまるでしょう。広告やパッケージ、イベントなど、幅広い用途で活用できる書体です。

  • 陳嶸Chen Rong

    太い筆画で四角全体を塗りつぶす手法は、漢字のデザインにおいて非常に難しいとされています。しかし、この書体は筆画の形を巧みに変形させ、空間を生み出すことで、その難題に見事に挑戦していますね。たしかに、この書体の実用性は本文書体には及ばず、審査員の間でも長く議論が交わされました。しかし、この大胆な挑戦は称賛に値するものです。さらに、小さいサイズでも視認性を維持している点も高く評価できます。

  • 劉暁翔Liu Xiaoxiang

    この作品は、今回の審査の中でも個人的に特に気に入っています。字面にゆとりがあり、リズミカルなデザインが魅力的ですね。大きなサイズで使用すれば視覚的なインパクトが際立ち、さらに嬉しいことに、小さなサイズでもしっかりと可読性が保たれています。特に「繁」「巍」「矗」の3文字には、並外れた才能と工夫が感じられます。

掲載している作品、プロフィール、制作意図、入賞コメントは、作者から提出された内容をもとに掲載しています。