繁体字部門 モリサワ賞 銅賞
rounded Kinbun
Designer
齋藤太一
日本
1993年茨城県生まれ。筑波大学大学院博士前期課程修了。現在は同博士後期課程に在籍し、中国古典書法のタイプデザインへの応用を主題として制作・調査を行う。株式会社アラレグミ取締役。
審査員コメント
-
廣村正彰
応募作品のなかでもひときわユニークで、審査の最初から気になっていた作品です。法則があるように見えますが、記号のようにしか見えない文字も含まれており、その不思議さが見る人を魅了するでしょう。象形文字のようなデザインは、一文字ずつでは読めなくても、文章として組んでみると、前後の文脈で読めるようになる。まるで文字を組み合わせることで初めて言語化され、意味を成すかのような、非常に印象的な書体だと思います。
-
許瀚文Julius Hui
スムーズに読めるものもあれば、記号にしか見えない文字もあり、見た目としてグラフィックデザインのようですが、タイプデザイナーから見ると、文字の歴史的背景に理解があり、太い書体を作る技術を備えている人がつくった書体という印象を受けました。たとえば「申」の曲線は外側を太く、内側を細く描いていますが、こうした描き方にはかなりの技術が必要です。黒/白のバランスも取れていて、非常によくできた書体だと思います。
-
何婉君Ho Wan Chun
この作品は審査の最初の段階からおもしろいと思っていましたが、私を含めた審査員3人が懸念していたのが文字の可読性です。一文字単位で読めるかどうか、文章として読めるかどうかについてディスカッションを重ねた結果、最終的にオリジナリティとクリエイティビティの面で銅賞にふさわしいと評価しました。独創性や審美性を追求するというモリサワ タイプデザインコンペティションの精神にも適う、完成度の高い作品だと思います。
掲載している作品、プロフィール、制作意図、入賞コメントは、作者から提出された内容をもとに掲載しています。
制作意図
殷周時代の中国において青銅器の銘文に用いられた文字である「金文」を、丸ゴシック的な線でもって設計したものです。古代文字特有の複雑怪奇な風貌の中に確かに存在する、或る種の可愛さやポップさを前面に押し出すようなフォントを目指しました。
入賞コメント
本作は董蓮池氏による字書『新金文編』に字形の典拠を求めたもので、この名編には平に叩頭するばかりです。また今回の受賞を通じて、金石学の偉業をタイプデザインの分野に接続し得たこと、非常に意義深く感じております。今後、タイプフェイス制作において金石学・書学の成果が大いに活用されることを期待しますし、本作がその契機になれば望外の喜びです。