繁体字部門 モリサワ賞 佳作

Wei Gothic

Designer

陳靖軒Chinghin Chan Roy

香港

香港生まれ。2019年に独立書体ブランド「思緒俠造字」を設立し、繁体字の見出し用フォントを提供。これまでに2種類のフォントをデザインし、販売。現在は英国在住。2024–2025年レディング大学書体デザイン修士課程で、欧文と多言語書体デザインの互換性を研究。今回の参加作品は入学前に制作したもの。

  • 制作意図

    この書体は北魏時代の石碑からインスピレーションを受け、書道の力強さと現代的なゴシック体のシンプルさを融合させています。デザインにおいては、古代石刻の質感と落ち着いた雰囲気を再現しつつ、現代のデザインの実用的なニーズにも応えています。古代書法と現代的なデザインの文脈の間に新しいバランスを創り出し、時代を超えた視覚的なコミュニケーションを通じて、デザイナーに歴史的な深みと現代的な創造性を兼ね備えたデザインツールを提供します。

  • 入賞コメント

    コンテスト参加時点では、まだ修士課程で書体デザインを学んでおらず、書体の歴史を研究中でした。手書きから木版彫刻、そして活版印刷へと変遷してきた漢字を知るにつれ、私はWei Gothic (北魏黒体) とともに、まるでパラレルワールドの香港で誕生したかのように感じました。書体の歴史を書き換えることを試み、街頭の北魏書法、石刻、美術文字を多様なデジタルフォントへと変換する試みに取り組んでいます。香港の輝かしい東洋の魅力を未来へと継承していきたいです。

審査員コメント

  • 廣村正彰

    波のようなリズム感が漂い、横書きにすると軽やかで流れるような動きが自然に表れ、心地よく読むことができる書体です。昔の職人が手がけた伝統的な看板の手書き文字を感じさせ、丁寧さと愛情が込められた温かみを感じます。どこか懐かしい雰囲気もあり、心に残るデザインです。

  • 許瀚文Julius Hui

    漢字のデザインに非常に好感が持てます。各文字の円弧の処理が優れており、特に「心」の部首の処理が素晴らしいです。しかし、筆画の多い漢字の線の太さの処理には改善の余地があります。ただ応用面では優れており、この書体を見ると台北の迪化街にある文化的な日常の新旧入り交じる店鋪の景観を思い起こさせます。大きな可能性を持つデザインです。

  • 何婉君Ho Wan Chun

    この書体は少しレトロな看板文字のような雰囲気を持ち、横線のデザインが巧妙で字形の書き味がこの書体の特徴を一層引き立てています。文字の濃淡や字形の大きさを少し調整することでさらに完成度が高まるでしょう。自由課題での組見本は、この書体の特色が十分に発揮されていますね。

掲載している作品、プロフィール、制作意図、入賞コメントは、作者から提出された内容をもとに掲載しています。