審査員紹介
和文部門

鳥海 修
タイプデザイナー
書体の使用領域はますます多様化してきて、一つの書体で多くを賄うような時代ではなくなった感があります。これからは明確なコンセプトを立て、その目的に最適化した書体が求められるのではないでしょうか。どこで使うのか、何に使うのか、どんな言葉を、どんな表情で語るのか。そこに至る手法はさまざまで、情緒的に処理することもよし、しっかりとした設計思想に基づいて作り上げるのもよし、ただ大事なことは文字は右手の軌跡だということを忘れてはいけません。見飽きない素敵な作品を期待します。
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西塚 涼子
アドビ システムズ 株式会社
Typekit、日本語タイポグラフィー、チーフタイプフェイスデザイナー
活字のように劣化しないデジタルフォントが多く生まれている時代だからこそ、デザインの価値をどこに見出すかが重要になってくると思います。鉛を彫ることがなくなり、墨を擦ることが減った今は、手軽にフォントができると考えるのではなく、昔のデザイナーや職人がした苦労と同等の価値をどこに見出すかが勝負です。アイディア次第でそれを凌駕してしまうこともあるでしょうし、価値は一つだけではありません。文字を囲む枠は向き合えば向き合うほど広く深く迷います。そう見えるようになったら良いものが生まれる兆し!たくさん試行錯誤してチャレンジしてください。その使った時間と努力は間違いなくデザインに現れます。魅力的な作品を楽しみにしています。
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廣村 正彰
グラフィックデザイナー
デジタルフォントに見慣れて使い慣れたこの頃、活字で印刷されたモノに出会うと心が少し高揚する。それは文字の成り立ちや作り方にも関係していると思うが、視覚体験だけではない感覚を呼び起こしてくれるのではないだろうか。金属と紙が触れてエッジが毛羽立つ感じやそれを指がなぞる感覚が他の感覚、聴覚や味覚なども刺激しているような気がする。
高品質なフォントがたくさんある中、新しいフォントは視覚以外の感覚も誘発するような造形の可能性を探るのも良いかもしれない。新鮮な感覚の書体に期待したい。
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北川 一成
GRAPH代表取締役
私が好きな書体は、2つの方向があります。
1つは、いっけん普通のような書体で、でも細部に神が宿るとでも表現すべき、一工夫こだわりが感じられる、見飽きのこない造形の仕事が施してあり、かつ、読みやすい書体が好きだ。
2つめは、これはいったい作者の発想はどうなっているのかしら???と私がびっくりしてしまうが、しかし制作において根底に極めて高度で知的な思考がかいま見れるアバンギャルドで挑戦的な独創性をもつ書体が好きだ。
これらの2つの方向は、外見こそ違えど、以下2つの共通した視点で制作されるであろうと予想する。
先ずは、歴史を俯瞰的にとらえられる視点。次に「私には知らないことがある」という視点、すなわち科学的な思考を巡らせることができる視点だ。
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欧文部門

サイラス・ハイスミス
タイプデザイナー
このコンペティションに一度も応募しなかったことを後悔しています。学生の時にコンペティションのことを耳にしたことは覚えていますが、応募するのを躊躇してしまいました。
学生時代の私の作品が受賞することはなかったとは思います。ですが、応募することでより一生懸命取り組み、大胆な作品に挑戦したり、新しいことを始めるきっかけになっていたかもしれません。わかりませんけれど。このコンペティションは私がつかまなかった機会です。
私の経験からお話しますと、審査員は全ての応募作品を審査する時間をとります。さらに、今回は新鮮なエネルギー、多様な経験、たくさんの力強い意見を持ち合わせた新しい審査員グループで審査いたします。大阪での審査会にて審査員全員が顔を合わせる数日間は刺激的で活発なタイポグラフィーに満ち溢れたものになるでしょう。
学生、プロにかかわらず、私と同じ過ちをしないでください。モリサワタイプデザインコンペティションに応募しましょう!皆様の書体を目にすることを楽しみにしています。伝統的、思考的、セリフ、サンセリフ、テキスト、ディスプレイ、ファミリー数の多い書体、シングルスタイルなど、全て歓迎します。
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イリヤ・ルーデラマン
タイプデザイナー
タイプデザインはとても特殊な分野ですが、実は魅惑的でもあります。
スケールの大きな字体と輪郭がたったのワンクリックで、私の本文書体に変換したことに純粋な喜びを感じたことを覚えています。また、キーボードのキーを押しただけで命を吹き込むことができるのです。このなんだか子供のような感覚を今でも時折感じます。
この数年間、私はタイプデザインに熱意を持ったたくさんの若いデザイナーに会いました。タイプ業界は成長しており、また年齢層が若くなっています。それは素晴らしいことです。だからこそ、モリサワタイプデザインコンペティションのようなイベントは重要であり、またあるべきものなのです。
モリサワタイプデザインコンペティションはこの業界におけるとてもユニークなイベントです。また、厳しいコンペティションを通してみなさんの真のポテンシャルを見る機会でもあり、プロフェッショナルなレベルに進む大事な機会でもあります。この機会を逃さないように!
プロフィール
イリヤ・ルーデラマン作の書体:BigCity Grotesque Pro、Kazimir, Permian (ペルミ市のための書体ブランド) 、 キリル文字版の以下書体:Austin、Dala Floda、Graphik, Marlene、MoMA Sans、Typonine Sans、Thema.

インドラ・クッファーシュミット
タイポグラファー
長年にわたり、モリサワのタイプデザインコンペティションを追ってきました。この分野における最も名高い賞だと思います。1990年代、このコンペティションが私にとっての現代タイプデザインへの導入であり、私が注目しておきたいと思うデザイナーたちの名前を覚えたものです。コンペティションに関わることで皆さんのキャリアが変わるきっかけやモチベーションとなる大きな道しるべとなることができます。コンペティションは新しいデザインに挑戦する実験の場でもあり、興味深い歴史を追求する場ともなるでしょう。皆さまの作品の提出を心待ちにしております。
プロフィール

ラウラ・ミセゲル
タイプデザイナー
世界にあなたの才能を披露する機会を見逃さないよう、ぜひあなたの書体を応募してください。とても大変ですがこれはあなたの一部ですからやりがいのある取り組みでしょう。機能性、個性、巧みなデザイン、言葉と感情を同時に伝えられる良い書体に求められる全ての品質の観点で、応募作品の中からあなたの作品が選ばれることを期待しています。
プロフィール
著書『TypoMag. Typography in Magazines』(IndexBook出版)。共著『Cómo crear tipografías. Del boceto a la pantalla』(Tipo eよりスペイン語で出版。ポーランド語、ポルトガル語、英語、中国語に訳されている)。Khatt財団のMaghribプロジェクトのTypographic Matchmakingの一環として、Kristyan SarkisとJuan Luis Blancoと共にプロジェクトを展開し、マルチスクリプト書体ファミリーのQandusを設計し、TDC 2017 Awardを受賞。
www.laurameseguer.com
特別審査員

マシュー・カーター
タイプデザイナー
2016年に開催された前回のタイプデザインコンペティションでは前々回の倍以上の応募がありました。このような素晴らしい反響を受け、多種多様のスタイルが入賞作品として選ばれました。これは現代のタイプデザインの健全性を映し出していると言えるでしょう。また、学生や最近の卒業生からの応募が多く寄せられました。教育現場において書体デザイン教育の意欲が高まっていることの表れであり、欧文部門の審査員にとってはとても喜ばしいことでした。和文部門においても同じように関心が高まっており、カリグラフィーへの注目が集まっています。
私自身のこのコンペティションへの関わりは1992年に遡ります。モリサワが著名なタイプデザイナーおよび新人タイプデザイナーの最も優れた作品を賛賞し時代の最先端を絶えず前進させるにつれ、コンペティションの知名度も国際的に上がってきています。あらゆるレベルの経験を積んだデザイナーたちが2016年の結果から刺激を受け、次回のコンペティションではさらに多くの応募が寄せられることでしょう。
これまでのコンペティションでは、入賞作品の選定という難しい任務を担う各部門の4名の審査員について、新鮮な視点を取り入れるためにメンバーを入替えてきました。今回、4名中3名が新たな審査員として選出されています。新しい審査員の皆さんにも、私やこれまでの審査員仲間たちがこの特別なイベントでいつも感じる幸せな満足感を味わって頂きたいと思います。
プロフィール