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和文部門の審査員からのメッセージを掲載しました

審査員の皆様からのメッセージをご紹介します。今回は和文部門の審査員の4名です。

(敬称略)

鳥海 修

モリサワの第2回タイプデザインコンテストが開催されます。どんな書体に出会えるのかとても楽しみです。日本の文字は大きな可能性を持っています。縦か、横か、紙か、電子か、それとも全部なのか。日を追うごとにコンピュータがハード・ソフトとも発展を遂げていく中で、文字ばかりがそのままというのはつまらない。タイポグラフィはここ数年で大きく変わるような予感があるので、いままでのタイポグラフィの概念を揺るがすような書体の力を見てみたい。またその一方で、ずーっと変わらない、変わる余地のないような完成度の高い書体も見てみたい。そんな贅沢な期待をしています。

 

永原 康史

こんなにたくさんの書体があるのに、なぜまた文字をデザインしようと思うのでしょう? 古事記の編纂者である太安万侶は、その序文において、言葉を文字に置き換えることの難しさにふれ、こう述べています。「言意並朴 敷文構句 於字即難 已因訓述者 詞不逮心」。超訳すれば、「言葉を文字で綴るのはむずかしい。意味をとって並べても、心には届かない」。文字が相手の心に伝わらないもどかしさは、今でも絵文字などに見ることができます。私たちが、こんなにもたくさんの書体を求める理由もそこにあるのかも知れません。新しいテクノロジーによって新しい身振りや手振りを備えた、心に伝わる文字の出現を期待しています。

 

原 研哉

VIの一環としてフォントをつくる事例をよく目にするようになりました。マークやロゴにのみアイデンティティの根幹を担わせるのではなく、専用フォントの開発と運用で同一性の基盤をつくるような、緻密なVIのステージが活性しているのです。そんな状況を牽引していくことのできる、豊かな表現力と抑制の利いたフォントデザインを期待しています。

 

山本 太郎

ある意味で、タイプデザインは手工芸であるともいえるでしょう。伝統を原型として、感覚的ひらめきや工学的技術だけでなく、修練と経験をとおして、自らの感覚や解釈を書体の姿として定着させるからです。他方で、デザインの一貫性、法則性を維持することも読みやすさのためには必要です。そこでは技術的な完成度や合理的なデザイン手法が重要となります。しかし、技術的な完成や合理性が、書体の潜在的な可能性を狭い範囲に閉じ込めて、ただ予定調和的な「美しさ」を演出するだけなら、その技術や「美しさ」は疑う必要があります。私は仕事の上で、文字をデザインする人と、文字を組む人、両者と永年接してきました。期待される機能・品質を満たしながら、他にはない独自の姿を見せてくれる、優れたタイプデザインが多く応募されることに期待しています。

 

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