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開催レポート:タイプデザインコンペティション 2016 表彰式

2017年5月11日(木)、「タイプデザインコンペティション 2016」の表彰式をUDXシアター(東京・秋葉原)にて開催しました。「タイプデザインコンペティション 2016」には、前回を上回る739点(和文部門205点・欧文部門534点)の応募作品が寄せられ、2016年11月に行なわれた審査では、これらの応募作品のなかから独創性や審美性を追究した作品に贈られる「モリサワ賞」(金賞・銀賞・銅賞・佳作3点)、モリサワからの製品化にふさわしい優れた作品に贈られる「明石賞」が選出されたほか、Webから投票によって選ばれる「ファン投票」各部門2点の受賞作品が決定。表彰式には16組17名の入賞者のうち11名が出席しました。

株式会社モリサワ代表取締役 森澤彰彦は、表彰式の冒頭で入賞者へ祝福の言葉を贈り、「今回のタイプデザインコンペティションは多くの国から非常に多くの応募があり、いずれも2014年のタイプデザインコンペティションに比べて約2倍という大きな伸びを示しております。モリサワ賞国際タイプフェイスコンテストのあと、10年の時を経て2012年に再開したコンテストですが、また活況を呈してきたと感じています」とタイプデザインへの興味の高まりを語りました。

そして、表彰式後に行なわれる特別セミナー「グローバル・タイプデザイン」について触れ、「日本が今、グローバル化の波に飲み込まれていく中で、フォント制作も大きな転換期を迎えています。私たちも日本語フォントを中心に開発をしていましたが、新たに他国語への展開というチャレンジにも取り組んでいます。現在、 『MORISAWA PASSPORT』等で利用いただいている言語数は約170言語にのぼりますが、今後もさまざまな言語に対応し、フォントのバリエーションを増やしていく必要性があります。そうした変化の中でフォント制作において、どのようなことが行なわれており、今後、どのようなことが行なわれていくのかということを、特別セミナーにてお伝えできればと思っています」と挨拶を締めくくりました。

表彰式は、モリサワ賞和文部門の表彰から行なわれました。プレゼンターを務めたのは欧文部門の審査員および審査員長を務めたマシュー・カーター氏。「しまなみ」で金賞を受賞した松村潤子氏、「月映え」で銀賞を受賞 した小澤直子氏、「なつめ」で銅賞を受賞した豊島晶氏、「雁楷書」で佳作を受賞した大庭三紀氏、「tgk02」で佳作を受賞したヨコカク氏、「くれとんぼ」で佳作を受賞した多田遼太郎氏の6名が順に紹介され、入賞者各氏には壇上でマシュー・カーター氏から賞名と受賞作品が刻まれたトロフィーが授与されました。

欧文部門では、「Vonk」で金賞を受賞したバルト・ヴォレブレヒト氏、「Rododendron」で銀賞を受賞したイトカ・ヤネチコヴァ氏、「Abelha」で銅賞を受賞したミシェル・デール氏とジュリアン・プリエ氏がそれぞれ表彰を受け、続くファン投票の表彰では、株式会社モリサワ代表取締役 森澤彰彦から、入賞者4名のうち「間取りフォント」で受賞した竹上紗矢香氏にトロフィーが手渡されました。

明石賞の表彰では、モリサワ文研株式会社代表取締役社長 森澤典久がプレゼンターを務め、「しまなみ」で和文部門明石賞を受賞した松村潤子氏、および「Vonk」で欧文部門明石賞を受賞したバルト・ヴォレブレヒト氏が再び登壇。両部門ともにモリサワ賞金賞とのダブル受賞であることが紹介されると会場は大きな拍手に包まれ、両氏は二つめのトロフィーを受け取りました。 表彰のあとには両氏による受賞スピーチが行なわれ、松村氏は二賞受賞の驚きとともに、「普段はグラフィックデザインの仕事をしており、タイプデザインはこれが初めての経験です。楽しく作った書体がこのような結果を迎えることができ、本当に嬉しく思っています」と喜びを伝えました。そして、「しまなみ」が広島県尾道市と愛媛県今治市を結ぶ「しまなみ街道」をイメージして作ったというエピソードや、現在、製品化に向けて制作を進めているという現状を話し、「皆さまに使っていただけるような質の高いフォントを目指して頑張っていますので、楽しみにしていただければと思います」と続けました。

ヴォレブレヒト氏は「このような素晴らしい賞をいただくことができて、大変名誉に思っていますし、また幸せに思っています」と話し、「この書体はオランダ・ハーグの王立芸術アカデミー(KABK)で、タイプメディア修士課程として取り組んだ書体です。そこでいろいろなアイデアやスケッチをつくりました。指導教授や仲間たちが自分をプロフェッショナルなレベルに引き上げてくれたのだと思います」と感謝の言葉を述べました。

表彰式の最後には、マシュー・カーター氏による総評が行なわれました。「今回はタイプデザインコンペティションが新しいシリーズになってから3回目となります。すべてが素晴らしく成功したコンペティションでしたが、今回特に顕著なのが、前回に比べてエントリー数が倍増したということでしょう。これはモリサワが全世界を周ってコンペティションの認知度を上げたこと、たくさんの学校を訪問された成果でしょう。また、流行だからという理由で賞を与える作品がひとつのスタイルに限定されることもなく、バラエティに富む受賞作が出たということも、非常にいいサインでないかと思います。審査員にとっても多くのエントリーの中から選ぶことができたというのは、とても幸せなことでした。コンテンポラリーな作品の中でも本当に最高のものを集め、最高のものに賞を与える。このコンペティションは非常に高いレベルで国際的なスタンダードを築きつつあると思います。次のコンペティションでも審査員が驚くような、高い水準の応募作品が数多く集まることを期待しています」と締めくくり、表彰式は幕を閉じました。

表彰式に続いて行われた特別セミナー「グローバル・タイプデザイン」の模様は後日お届けします。