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レポート:第6回特別セミナー『文字を作る、文字を使う』session3 葛西薫氏 講演

2018年8月28日、東京国際フォーラムにおいて株式会社モリサワ主催「第6回タイプデザインコンペティション特別セミナー」が開催された。
このセミナーは「タイプデザインコンペティション 2019」の作品募集開始に先立ち行われたもので、欧文部門審査員でタイプデザイナーのサイラス・ハイスミス氏の講演、和文部門審査員で書体設計士の鳥海修氏と過去のコンペティション入賞者との対談、そして最後に文字の使い手として、アートディレクターの葛西薫氏が登壇した。

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「字・言葉・物語」

セミナーの最後には、サン・アドで数多くのCMやCI、広告の制作・アートディレクションに携わってきた葛西薫氏によるデザインと文字についての講義があった。
葛西氏は高校生の時にレタリングの通信教育に夢中になり、文字の仕事につきたいと考えたとのこと。その経験があって、コマーシャルを作るようになっても「文字が助けてくれた」経験が多かったと話す葛西氏。「字は言葉のためのものであり、言葉は文章になり、文章が物語を作り出す」と語る。

葛西氏がこれまでに感銘を受けたグラフィック作品や、文字のどこにどんな魅力を感じるのか? 書体のデザインから感じられる高貴さやセクシーさ、緊張感はどこからくるのか? といった話を経て、自身の作品を解説しながら紹介。

1995年の映画『幻の光(是枝裕和監督劇場映画デビュー作)』のポスターでは、活字の清刷り(印画紙に焼き付けたもの)を取って、タイトル文字を作ったとのこと。特に「幻」という文字は偏とつくりの絡み合いにゾクゾクしたという。

サントリーの烏龍茶のCM中国シリーズでは、「一、二」「ユーはいいなぁ」「?」といったミニマムで洗練されたキャッチコピーが使われている。これらは葛西氏が自分でレタリングしたり、中国の人に描いてもらったり、イラストレーターに頼んで書いてもらうなど、表現したい物語ごとに考えた工夫の数々が紹介された。これらのCMは20年以上前のもので、1本は30秒程度の長さしかない。しかし短い時間の中に物語が凝縮されていて、古さはまったく感じられず、良質な映画を見るような心地よさが会場にあふれていた。

〈文●伊達千代(TART DESIGN OFFICE) 写真●弘田充〉

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