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講演レポート:第4回タイプデザインコンペティション特別セミナー「タイプデザイナーの視点」《デヴィッド・バーロー 「Restless wind inside a letter box ―レターボックスの中で起こる変化」》

株式会社モリサワは、第4回タイプデザインコンペティション特別セミナー「タイプデザイナーの視点」を2016年2月17日(水)、東京国際フォーラム ホールD7(東京・有楽町)にて開催しました。
このセミナーは、世界各国から創造性あふれる書体を募る「タイプデザインコンペティション 2016」の開催を記念して実施するもので、文字や書体、フォントに興味を持つ多くの方に参加をいただきました。
セミナーには3名のタイプデザイナー、グラフィックデザイナーが登壇し、書体制作のプロセスや取組み方、文字組の考え方について解説しました。

1つめのセッションはFont Bureau社およびWebtype社のオーナー兼取締役であり、タイプデザイナーとして40年近いのキャリアを持つデヴィッド・バーロー氏による基調講演「Restless wind inside a letter box―レターボックスの中で起こる変化」。

バーロー氏は講演の冒頭で、「私の書体やタイポグラフィ、フォントの開発についての考え方は、これまで私が手がけた作品によって形成されています。その中には成功したものやあまり成功しなかったものもあります」と話を切り出すと書体開発のプロセスについて、スライドを交えて説明を始めました。

タイプデザインとは、デザインと検証を繰返しながら、すべてのグリフをレターボックスに納め、小さな世界を作っていくことであり、書体のコンセプトがユーザーの元に届くまでの間には、いくつものフェーズがある、とバーロー氏は言います。

そのフェーズとは、Management(管理)/Design(デザイン)/Analysis(解析)/Generalization(汎用化)/Productization(製品化)/Publication(公開・販売)/Monetization(貨幣価値への変換)の7つで構成されており、「書体の開発において、デザイン、汎用化、解析というプロセスは必ずサイクルで訪れる」と解説。氏の言う「汎用化」とは、文字の太さや幅、サイドベアリング(グリフ前後の余白)、カーニングデータの設定、ヒンティング情報、グリフの置換表といった技術をきちんと組込むことであり、ターゲット言語の中で1,000語程度の単語を組むことでそれが最適に機能をしているかを検証します。「そうしたフレームワークを経ることによって私たちは最高のフォントを作り上げることができる」とフォント開発のプロセスを説明しました。

話題は講演テーマでもある風(wind)に移り、バーロー氏はフォントを「レターボックスという仮想的な箱にグリフという仮想的な文字が納められているもの」と捉えたうえで、文字はその描かれ方やスタイルによって見る側の印象に影響を与えるとし、文字とタイプデザイナー、そしてタイポグラフィによって伝えられる想いの間には、バーロー氏が“風(wind)”と呼ぶものが存在すると話しました。

「この風には強いものがあれば弱いものもあり、善いものもあれば悪いものもあります。解像度やダウンロード速度、記述言語、UI、文字コード、OSといった技術的なものだけでなく、政治、経済、人間関係、それらの歴史など、さまざまな風が吹いています。私はこうした文字の中に吹く、たゆみない風に長年取組み、その風がグリフやタイプフェイスのスタイル、フォントファミリーそして製品計画に及ぼす影響を考えてきたのです」

バーロー氏はその取組みの例として、特定の条件によって作られた3つのプロジェクトを紹介しました。

1つ目はウェアラブルデバイス用にデザインされたスクリプト書体「Delilah」。太いウエイトの文字をデザインする際に文字のどこに線を追加するべきか、低解像度デバイスで表示した際に線が消えないかどうかなど、小さなデバイスでも再現可能な文字のデザインを検証するプロセスが紹介されました。

2つ目はスクリーン上での可読性を高めたWebフォント「The Reading Edge (RE) fonts」シリーズ。小さな文字でも十分な可読性を保つために、高いxハイト、幅、そして十分な白いスペースが必要であるとし、こうした要件を満たしているフォントの例としてマシュー・カーター氏がデザインした「Verdana」を挙げ、合わせて自身が手がけた「Benton Modern RE」「Benton Sans RE」「Poynter Serif RE」を紹介。さらにヒンティングなしでMacで9px、ヒンティングありでWindowsで11pxで読むのに適したタイプをデザインしたと解説を加えました。

3つ目は古いアメリカの装飾文字をデジタル化するプロジェクト。バーロー氏はまずスクリーンに「ALMANAC」と呼ばれる気候、天候、作物や家畜などに関する暦の情報がまとめられた年鑑を映し出すと、そこで使われている影付きの文字や装飾された文字を紹介しました。しかし、分析調査の結果、これらの文字は影の深度や光の角度が異なっていたため、デジタル化にあたってデザインの一貫性を持たせることが難しいと判明し、ロゴのスタイルを変更しなければならなくなりました。

しかし、メキシコを訪れた際に出会った手描き看板に感銘を受けた氏は、テキスト用の書体のデザインとロゴ用の装飾的な書体をわけて考えるのではなく一連のものとして考え、クラシックなローマンレターをベースに幾何学的な形や有機的な形を組合わせた装飾タイプの文字のデザインを始めた、とそのプロセスを語りました。

このプロジェクトについて、バーロー氏は「個々の文字はほとんど一日かけなければなりません。2020年もしくは2025年には完成する予定ですが、できあがったときには(多くの文字をデザインしなければならない)日本語のタイプデザイナーの気持ちがわかるんじゃないかと思います」と添え、セッションを終えました。

次回は3月11日(金)に掲載します。お楽しみに。

●タイプデザインコンペティション 2016の応募要項はこちらから